多くの日本人を感動させた小惑星探査機「はやぶさ」をめぐる映画が相次いで製作され、異例の競作状態だ。
すでに2作が公開され、2~3月にも新作が封切られる。どれが一番おもしろいか?
2010年6月に地球に帰還した「はやぶさ」。
何度も重大なトラブルに見舞われ、まさに満身創痍ながら任務を果たした探査機は、「感動で泣けるネタはないか」と探し回る映像業界にとって救世主となった。
競作となったのは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が、はやぶさの意義を広く国民に知ってもらうため、どの映画会社にも協力した結果だ。
「ホンネは『ウチで独占したかった…』という会社ばかり」(映像プロデューサー)。
4作ある映画の先陣は昨年5月14日に角川映画系配給で公開されたドキュメンタリー「はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH」。
プラネタリウム用CGアニメの手直しだが、週間の観客動員でベストテン入りし、ブームを証明した。
残る3作は実話ベースのフィクション。
登場人物にもモデルがいるから内容が似通ってしまうのは当然だが、人間ドラマで大きな違いがある。
同10月1日に公開された「はやぶさ HAYABUSA」は、20世紀フォックス映画配給。
堤幸彦監督のメガホンで、竹内結子(31)が演じるJAXA女性広報員の視点で物語が語られる。
製作スタッフはインターネットの「2ちゃんねる」も参考に、ネットでの盛り上がりを再現しようと試みた。
「竹内が子供たちのための絵本を作ったり、はやぶさを擬人化してセリフを言わせたり、難しい専門知識をわかり易く説明する努力をしているので、中学生の教材にも使えそう。内容的にはJAXAのPR映画を見ているようだが」と映画評論家の垣井道弘氏。
DVDが3月7日に発売予定。
逆に、重厚で熱い人間ドラマに仕上がったのが、来月11日公開の東映系「はやぶさ 遥かなる帰還」(瀧本智行監督)だ。
主演・渡辺謙(52)が演じるプロジェクトマネジャーに、新聞記者役の夏川結衣(43)と町工場のオヤジ役で山崎努(75)がからむ。
「歴史的な快挙を達成するために、リーダーには何が求められているのか。仕事は部下に任せ、責任は自分が負うリーダー像が頼もしい。演出の細かさも光り、サラリーマンの共感を呼ぶ」(垣井氏)。
トリは3月10日公開の松竹系「おかえり、はやぶさ」(本木克英監督)。
主演はエンジニア助手役の藤原竜也(29)で、3D映画の立体的な映像が見どころだ。
火星探査機「のぞみ」の失敗(1998年打ち上げ)にも触れているので、日本の宇宙開発史の勉強にもなる。
「のぞみ失敗で引退した助手の父親(三浦友和)との葛藤が軸。しかし、宇宙大好きの少年(前田旺志郎)の母親が病気で、回復をはやぶさに託すといった、いかにもお涙頂戴的なエピソードなど、盛りだくさんの欲張りすぎた構成はサービス過剰。親子で楽しめる分かりやすいファミリー・ピクチャー」と垣井氏。
「一斉に同じネタに飛びつくのは今の映画業界の貧困な企画力の裏返し」(前述のプロデューサー)という声をヒットの連発ではね返すことができるか。

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