
出るぞ出るぞといわれながら、なかなか出ないお化けみたいな存在のドコモ版iPhone(アイフォーン)。
その何度目かの「出るぞ」報道が流れた。NTTドコモと米アップルがiPhoneとiPad(アイパッド)販売で基本合意したというのだ。![]()
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ドコモはすぐに否定したが、同社が以前からiPhone参入の機会をうかがっているのは周知の事実。
ドコモ版iPhoneが登場すれば、携帯電話業界はもちろん、利用者にも大きなインパクトをもたらす。
今回のドコモ版iPhone騒動の発端は、日経ビジネス電子版が1日、
「ドコモの山田隆持社長らが先月中旬、米国でアップルのティム・クックCEOらと会談、iPhoneとiPadの販売で基本合意した」と報じたこと。
日経ビジネスはau(KDDI)のiPhone参入もいち早く報じた実績があり、他のメディアも追随した。その反響は大きく、1日の株式市場ではドコモの株価が2.3%上昇。
その一方で、iPhone4Sを販売するKDDI株は約1.7%下げ、ソフトバンク株は約5%も急落した。
市場では「この日は米国株の急騰を受けて主力銘柄には軒並み買いが入っていただけに、ソフトバンクやKDDIの下落は目を引いた。ドコモのiPhone参入で顧客獲得が頭打ちになる恐れや、販売競争で安売りを余儀なくされ、収益を圧迫するとの警戒感が広がった」(銀行系証券)との声も聞かれた。
当のドコモは報道直後、「現時点において当社がアップル社と基本合意した事実はない。また、現時点において具体的な交渉をしている事実もない」(広報部)と報道内容を否定した。ただ、「現時点では」をわざわざ2回も繰り返して(強調して?)いる点が何とも気になる。
専門家はどうみるのか。
ITに詳しいジャーナリストの西田宗千佳氏は
「アップルは(最新の高速通信規格である)LTE対応のiPhoneを来年秋に出す可能性がある。
それを日本で売るため、すでに他社に先駆けて対応製品を出しているドコモから新型iPhoneを発売する可能性はありうる。ただ、報道のようにドコモが来年秋に発売するかどうかは確たる証拠がないので分からない」と語る。
一方、携帯電話研究家で武蔵野学院大准教授の木暮祐一氏は「ドコモのiPhone参入は既定路線」と明言する。
iPhoneは2008年にソフトバンクが国内での販売権を獲得したが、事前に有力視されていたのはドコモだった。
しかし、アップルが要求した販売ノルマなどの条件面で折り合わなかったとみられている。
その後、アップルが複数の通信会社からiPhoneを発売する方針となり、今年10月にはauもiPhone4Sを発売した。
ドコモがiPhoneを投入する環境は整っているようにみえる。
「アップルも本音では、日本で最大のシェアを持つドコモと組みたいはず」と木暮氏は言う。
現在、携帯電話3社のシェアはドコモ48%、au27%、ソフトバンク22%だが、ドコモ版iPhoneが発売された場合、シェアは変化するのか。
木暮氏は「(通信品質で劣る)ソフトバンクが不利といわれているが、むしろauのシェアが下がるのではないか。4Sの競合販売でも、ソフトバンクからauに流れたユーザーは思ったほどは多くなかった。
au(の通信品質)もそれほどよくはない、という声もある。結局、ドコモ版iPhoneが出るまで待つという人は多い」という。
前出の西田氏は「当初はソフトバンクなどのユーザーがドコモに動く可能性はあるが限定的で、シェアにそれほど大きな影響は出ないだろう。むしろドコモ内でiPhoneが選択肢になれば、既存の携帯電話メーカーへの影響のほうが大きい」と指摘する。
ドコモ向けにスマートフォンやタブレットを投入しているのはソニーやサムスン、富士通、NECなど。いずれも基本ソフトはグーグルの「アンドロイド」を搭載している。iPhoneの売り上げが伸びれば、アンドロイド端末を提供するメーカーは当然打撃を受けることになる。
もっとも、ドコモユーザーを含む利用者にとっては、選択肢が増えて競争が激しくなるのは望むところだ。
前出の木暮氏は「ドコモ版iPhoneが出れば、通信会社間の端末の違いはほぼ解消され、競争の舞台は通信会社の本来の領分であるネットワークサービスの充実度に移る。ドコモは品質維持が優先なのでそれほど料金は変えないだろうが、他社は料金値下げで契約者の流出を防ごうとするだろう。これは、すべての携帯ユーザーにとって歓迎すべきこと」と語る。
いずれにしても、ドコモ版iPhoneは今秋のau版登場のときより大きなインパクトを市場にもたらすはずだ。